神奈川県の地価は5年連続上昇。でも横須賀は?
2026年9月、令和8年(2026年)の都道府県地価調査、いわゆる「基準地価」が発表されました。
神奈川県の発表によると、県内の住宅地は5年連続で上昇。
2026年の住宅地の平均変動率は**+3.1%**となりました。
前年は+3.3%でしたので、上昇自体は続いているものの、上昇幅は少し縮小しています。
では、
「神奈川県の地価が上がっているなら、横須賀の土地も全部上がっているの?」
と思う方もいるのではないでしょうか。
実際に横須賀市の数字を見てみると、住宅地37地点の平均変動率は**+1.9%**。
前年の+1.7%から上昇率は少し拡大しています。
ところが、今回の結果を町ごとに見てみると、もっと面白いことが分かります。
同じ横須賀市内でも、
「かなり上がっている場所」と「ほとんど動いていない場所」があります。
今回は2026年の横須賀 基準地価を町ごとに見ながら、
「なぜ同じ横須賀なのに、これだけ差が出るのか?」
そして、
「地価が上がったというニュースを、自宅の売却価格ではどう考えればいいのか?」
というところまで考えてみたいと思います。
そもそも「基準地価」とは?
まず簡単に、基準地価について説明します。
基準地価とは、都道府県が毎年7月1日時点の土地価格を調査し、公表するものです。
横須賀市内すべての土地を調査しているわけではなく、地域の中から選ばれた「基準地」について、1㎡あたりの価格が公表されています。
一般の土地取引価格を考える際の一つの指標として利用されているものです。
そのため、
「自宅そのものの価格を発表しているわけではない」
という点は、最初に押さえておきたいところです。
横須賀市内でも上昇率はこんなに違う
では、実際の数字を見てみましょう。
2026年の神奈川県地価調査から、横須賀市内の住宅地の中で違いが分かりやすい地点を抜粋しました。
| 地域 | 2026年基準地価 | 2025年基準地価 | 前年比 | 今回の数字で注目したい点 |
|---|---|---|---|---|
| 秋谷 | 133,000円/㎡ | 126,000円/㎡ | +5.6% | 横須賀市内でも特に高い上昇率 |
| 根岸町5丁目 | 152,000円/㎡ | 145,000円/㎡ | +4.8% | 市平均を大きく上回る |
| 久里浜7丁目 | 158,000円/㎡ | 151,000円/㎡ | +4.6% | 久里浜エリアの住宅地 |
| 湘南鷹取4丁目 | 123,000円/㎡ | 118,000円/㎡ | +4.2% | 高台の住宅地でも高い上昇率 |
| 粟田1丁目 | 88,400円/㎡ | 85,000円/㎡ | +4.0% | 駅近だけでは説明できない動き |
| 深田台 | 189,000円/㎡ | 182,000円/㎡ | +3.8% | 今回掲載した住宅地では価格水準も高い |
| 森崎5丁目 | 91,000円/㎡ | 90,500円/㎡ | +0.6% | 上昇しているが動きは小さい |
| 佐野町2丁目 | 96,500円/㎡ | 96,000円/㎡ | +0.5% | ほぼ横ばいに近い動き |
| 阿部倉 | 54,200円/㎡ | 54,000円/㎡ | +0.4% | 上昇幅は小さい |
| 田浦町1丁目 | 103,000円/㎡ | 103,000円/㎡ | 0.0% | 前年と同額 |
| 上町1丁目 | 81,300円/㎡ | 81,300円/㎡ | 0.0% | 前年と同額 |
※価格は1㎡あたり。神奈川県「令和8年地価調査 基準地価格一覧」に基づく。
こうして並べてみると、かなり違います。
横須賀市の住宅地全体では+1.9%ですが、秋谷は+5.6%。
一方、田浦町1丁目や上町1丁目は前年と同額です。
私自身、今回の数字を見て改めて面白いと思ったのは、
「横須賀の地価」という一つの数字だけでは、実際の市場をなかなか説明できない
ということです。
なぜ同じ横須賀なのに、こんなに差が出る?
ここからは公式発表の数字そのものではなく、日頃不動産を扱っている立場から少し考えてみます。
地価を左右する条件は、単純に「駅から近いかどうか」だけではありません。
例えば、
駅までの距離や交通アクセス、道路の広さ、平坦地か坂道か、土地の高低差、擁壁の有無、買い物などの生活利便性、周辺で供給される新築住宅の価格、海や眺望などの環境、住宅地としての人気や希少性など、さまざまな条件があります。
そして横須賀は、こうした条件が町によってかなり違う街だと思います。
秋谷+5.6%は「駅近」では説明できない
今回、横須賀市内の住宅地で特に目を引くのが秋谷です。
2025年の126,000円/㎡から2026年は133,000円/㎡となり、+5.6%。
横須賀市住宅地平均の+1.9%を大きく上回っています。
秋谷は、いわゆる「駅近住宅地」ではありません。
それでも高い上昇率になっているところを見ると、不動産価格は駅距離だけで決まらないことがよく分かります。
秋谷周辺には海に近い立地や眺望を期待できる不動産もあり、一般的な通勤利便性を重視する住宅地とは異なる需要があります。
もちろん、今回の地価上昇が「海が近いから」「眺望があるから」と公式資料に書かれているわけではありません。
ただ、不動産の現場では、こうしたその地域にしかない特徴や希少性が価格に影響することがあります。
同じ横須賀市内でも、買う人が何を求めているかが違うわけです。
根岸町・久里浜など利便性のある住宅地も上昇
一方、根岸町5丁目は+4.8%、久里浜7丁目は+4.6%でした。
こうしたエリアでは、交通や生活の利便性なども住宅を探す方にとって重要な判断材料になります。
特に実際の住宅探しでは、
「駅まで何分なのか」
だけではなく、
「スーパーは近いか」
「車を使いやすいか」
「通勤・通学しやすいか」
「周辺に新築戸建てはいくらくらいで出ているか」
といった条件をまとめて比較されます。
土地価格そのものだけでなく、
「ここに住んだら生活しやすいか」
という部分も、住宅地の需要には関係してきます。
湘南鷹取+4.2%も興味深い
湘南鷹取4丁目も、2025年118,000円/㎡から2026年123,000円/㎡へ上昇し、変動率は+4.2%でした。
横須賀というと、
「坂がある土地は安い」
と単純に考えてしまうこともあります。
しかし、実際の不動産価格はそれほど単純ではありません。
高台でも街並みが整っていたり、住宅地として一定の評価があったり、土地の大きさや住環境を求める購入者がいたりすれば、需要が生まれます。
逆に駅に近くても、道路が極端に狭い、車が入らない、大きな高低差がある、古い擁壁がある、といった条件によって売却価格に影響が出ることもあります。
つまり、
「駅近だから高い」「坂だから安い」だけでは判断できない。
横須賀の不動産価格を見るときには、この感覚はかなり重要だと思います。
一方で、ほとんど価格が動いていない地域もある
今回の地価調査では、横須賀市内37地点すべてが大きく上昇しているわけではありません。
例えば、
田浦町1丁目は103,000円/㎡で前年比0.0%。
上町1丁目も81,300円/㎡で前年比0.0%。
阿部倉は+0.4%、佐野町2丁目は+0.5%、森崎5丁目は+0.6%でした。
神奈川県全体では住宅地が+3.1%。
ニュースだけを見ると、
「神奈川県の土地はかなり上がっている」
という印象を持つかもしれません。
しかし、横須賀市の中だけを見ても、+5%を超える地点からほぼ横ばいの地点まであります。
だからこそ、県全体や横須賀市全体の平均値だけを見て、自分の不動産価格を判断するのは少し難しいところがあります。
「秋谷が5.6%上昇」=「秋谷の家が5.6%高く売れる」ではない
ここが今回、一番お伝えしたいところです。
例えば、
「秋谷の基準地価が5.6%上がった」
というニュースを見たとします。
では、昨年3,000万円で売れた秋谷の家が、今年は単純に5.6%上乗せされて3,168万円で売れるのでしょうか。
そういう計算にはなりません。
基準地価は、あくまで選ばれた基準地点の価格です。
実際の不動産売却では、同じ町内でも物件ごとに条件が違います。
土地の形、接道している道路、駅までの距離、高低差、擁壁、建物の築年数や状態、リフォーム履歴、眺望、駐車場の有無や台数などでも価格は変わります。
さらに実際に売却するとなれば、
直近でいくらで成約しているのか
そして、
今、同じエリアでどんな物件がいくらで売りに出ているのか
という情報も非常に重要です。
例えば自宅を3,500万円で売りたいと思っていても、すぐ近くで条件の似た物件が3,200万円で販売されていれば、購入者は当然比較します。
逆に競合物件が少なく、その条件の不動産を探している人がいれば、過去の相場以上で売却できるケースもあります。
これが「基準地価」と「実際の売却価格」の大きな違いです。
地価上昇のニュースは「自宅の価格を確認するきっかけ」に
今回の2026年基準地価を見ると、神奈川県の住宅地は5年連続で上昇しています。
横須賀市の住宅地も平均では+1.9%。
その中でも、
秋谷+5.6%
根岸町5丁目+4.8%
久里浜7丁目+4.6%
湘南鷹取4丁目+4.2%
粟田1丁目+4.0%
と、市平均を大きく上回っている地点があります。
一方で、田浦町1丁目や上町1丁目のように前年と同額の地点もあります。
こうして見ると、
「横須賀の土地価格は上がっているか、下がっているか」
という二択ではなく、
「横須賀の中でも、場所や条件によって動きが違ってきている」
と考えた方が実際の不動産市場に近いのではないでしょうか。
そして自宅の価格を知るには、基準地価だけでなく、周辺の成約事例や現在の販売物件、土地・建物それぞれの条件まで見ていく必要があります。
ニュースで「地価上昇」という言葉を見て、
「そういえば、うちの家も昔より高くなっているのかな?」
と思った方は、一度現在の価格を確認してみるのも面白いかもしれません。
売却するかどうかは、その後で考えても遅くありません。
今すぐ売る予定がなくても、
「今、自分の不動産はいくらくらいなのか」
を知っておくことは、将来の売却や相続を考えるうえでも一つの材料になると思います。
参考資料
・神奈川県「令和8年地価調査結果について」
発表:神奈川県政策局政策部土地水資源対策課
公表:2026年9月15日
・神奈川県「令和8年神奈川県地価調査」
令和8年7月1日時点の調査結果
詳細資料掲載:2026年9月16日
・神奈川県「令和8年地価調査 基準地価格一覧」
横須賀市内の各基準地について、2026年価格・2025年価格・変動率を確認
・国土交通省「令和8年都道府県地価調査」
令和8年7月1日時点
・国土交通省「不動産情報ライブラリ」
※本記事に掲載した基準地価は、特定の不動産の売却価格を示すものではありません。実際の不動産価格は、土地・建物の状態、接道、高低差、周辺の取引状況などによって異なります。